古今和洋菓子処「古今果」宮島口に誕生。

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9月5日の本日、広島の宮島口に「古今果」が誕生しました。
クライアントの藤い屋さんが、九十年の伝統をもつあんづくりをいかし、
あんをより美味しく召し上がっていただきたいとの思いで
菓子工房とカフェによる新ブランドを立ち上げたのです。

伝統のあんを現代にいかし、和と洋の垣根を越えたお菓子づくり。
瀬戸内の季節の果実や地元、広島の素材も取り入れて
今の時代に合った美味しさを提案していくブランドです。

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コピーライター、永松聖子さんの数々のネーミング案をもとに話し合いを重ね、
古くからの素材や技術を今にいかすという意味をこめて「古今果」に決定。
シンボルは、古今をつなぎ、未来の菓子文化につないでいく意志をデザインし、
欧文ロゴタイプは瀬戸内の波のようにやわらかくデザインしました。

建築設計は、数々の受賞歴をもつ気鋭の建築家、中村拓志氏。
瀬戸内の波をイメージしたガラスのファサードをくぐり、
木々を眺めながら庭を歩く行為もデザインされているようです。

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床にも波をあしらった一階の店舗では、ショーケース正面にも波のタイル。
右の鉄製のロゴサインは、地元で鍛冶職人をされている岡本友紀さんの作品。
磨き漆喰の壁に表情のある影を落としています。

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ショーケースには、あんそのものを楽しめる大福やあんぱんに、
あんとカスタードを合わせたシュークリームや
瀬戸内の果実を使ったタルトやケーキ。
もちろん広島産大長レモンのタルトも並びます。

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二階のカフェも伝統的な素材や技術を今にいかしたモダンな空間。
四季折々でうつろう窓越しの木々も空間の一部です。

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このパウンドケーキに見えるお菓子は、古今果のコンセプトを象徴的に表す「ukishima」。
あんを使った伝統の蒸し菓子、浮島を焼き菓子に仕立てました。
あんがバターに代わるはたらきをするのだそうです。
写真のお菓子は抹茶ピスタチオ。「ukishima」には6種類の味があります。

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「ukishima」(右)と同様に「an sablé」(左)も象徴的なお菓子。
あんとしっとりとしたサブレをキャラメルの香りがつなぎます。
こしあん×アーモンドサブレ、つぶあん×カカオ味のサブレ。
中部地方のあん文化で育った私には特に嬉しい組み合わせです。

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ギフト箱は空間と同様に瀬戸内の波をモチーフにデザイン。
宮島口からのぞむ島々を表現しています。
大きな箱の手前が藤い屋さんの本拠地の宮島、
左上が似島、右上の二つつながっているのは江田島と能美島、奥が倉橋島。
小さな箱は、手前から阿多田島、奥は大黒神島で、
二つ並ぶとひとつの絵になります。

古今和洋菓子処、古今果。
古今と和洋が融合した新しい菓子文化が
ここから始まることを願っています。

撮影:大森恒誠

古今和洋菓子処 古今果
〒739-0411 広島県廿日市市宮島口1-12-5
Tel : 0829-20-5670  Fax : 0829-20-5673
営業時間 
1F 店舗  10:00~19:00  
2Fカフェ 10:00~18:00(L.O.17:30)
アクセス
● JR山陽本線宮島口下車徒歩3分
● 広島電鉄宮島口下車徒歩1分


 

しゃり、ふわ、ぷるんの「淡雪花」

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「ひろしま菓子博」のために藤い屋さんが開発した
新しいお菓子のパッケージデザインを担当しました。
ついアップしそびれたまま半年が過ぎ、早くも季節は秋です。

雪の結晶をまとったようなキラキラした外見。
食べてみると、外側の氷餅の「しゃりっ」とした食感が
マシュマロのような「ふわっ」に変わり、
レモン羹の「ぷるん」に至るのです。
レモンはもちろん、広島名産の大長レモン。

和菓子と洋菓子が無理なく手をつないだような、
そんな新感覚のお菓子なのです。

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ネーミングはコピーライターの永松聖子さん発案の、
淡雪と雪花を掛け合わせた
「淡雪花(あわせつか)」がぴたりとはまりました。

デザインは、和洋が融合した新しさを目指し、
雪輪と雪の結晶をモダンな紋様としてデザイン。
個包装は、雪輪形の窓でお菓子をかたどり、
箱は銀の箔押しで仕上げました。

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菓子博の期間中は広島駅限定でしたが、
好調な販売が完了してからは、広島だけでなく
新宿高島屋など東京でも販売されるようになりました。

茶席でのお菓子としてはもちろん、
ようやく秋らしくなってきた今日この頃、
シャンパンと合わせて、
目にも喉にも涼やかなひとときはいかがでしょう。
撮影:大森恒誠

 

平清盛に想いを馳せた「いつくし丸」

今年の大河ドラマに合わせて制作してきたお菓子が、完成しました。
厳島神社への参道沿いに本店がある藤い屋さんが、平清盛の大海への夢や、
都の雅やかな文化への憧れに想いを馳せて焼き上げたものです。

安芸守であった清盛に縁の深い、地元広島の大長レモンと、
京都・宇治の抹茶を使った香り高い焼菓子。形は舟に見立てています。

「いつくし丸」という名前は、
コピーライターの永松聖子さんの多くの案をもとに、
長いやり取りの中で出てきた彼女の一言をキャッチ。
清盛が修造に関わって熱心に信仰した厳島神社にちなみ、
しかも舟であることを意味する名前です。

パッケージの形状は、ごく自然に舟型に着地しました。
それから、厳島神社に伝わる貴重な古い図録、平家物語に関する書籍、
家紋や伝統紋様についての資料に何度も目を通し、
キーワードを拾いながら、思いつくままにラフを描いていきました。

平家の紋である蝶をモチーフにする案は早い時期に出ていましたが、
進取の気質に富んだ清盛の表現が、伝統的な素材そのままではあり得ません。
十二単に象徴される雅な世界をグラフィカルにというのも、
いかにも自分らしくまとめたゴールが見えてしまう・・・。

清盛の夢を乗せて出航する舟は、どんな舟なのだろう。

檜扇を蝶に見立てた「檜扇蝶」という家紋がありますが、
あるとき、大海に舞う檜扇蝶が向き合って羽を広げる姿が浮かびました。
平家の色である赤とスミ文字を入れてみたとき、
この先に答えがありそうな手応えをようやく掴んだのでした。


徹夜で仕上げたデザインは、本来は一拍おいて見直すべきなのですが、
時間がないこともあり、意図の文章を添えてすぐにクライアントに送信。
返ってきたメールには、これまで以上のご好評が書かれていて、
まずはホッとし、少し眠ってから細部を仕上げていきました。

永松さんとWEB担当の金具智子さんから、異口同音に
「いい意味で裏切られました」という言葉をもらえたことも収穫です。
仲條正義さんからいただいた「裏切りが必要」を座右の銘としながら、
なかなか実践できていなかったという自覚があるので、
もっと変わる勇気を持とう、という想いを新たにしました。

 

幸いなことに、発売から五日間で初回制作分を完売したそうです。
まだ広告も何もしていない中での幸先の良いスタート。
2012年という大海に向かって、新しい美味しさが出航しました。

 

撮影:大森恒誠
菓子器制作:玉川堂

 

 

 

エビベジとQ’s CLUB、伊勢丹新宿店にデビュー

栃木のおいしい野菜をつくる農家さんたちのチーム「Q’s CLUB」
そのリーダーである海老原秀正さんの「エビベジ」が、
明日9月14日に伊勢丹新宿店B1に登場します。

昨年の夏にギリークラブの企画でエビベジと衝撃的に出会って、
1年ほど、野菜を味わいながらブランディングを進めてきましたが、
ここで、初めてデパ地下、それも伊勢丹新宿店で販売!という
恵まれたデビューとなりました。

Q’sの方のサイトは、ようやく助手の宇留間能力くんが作り終えて、
さきほどオープンしたばかり。
今は、明日のオープン目指して
エビベジ」オフィシャルサイトが大詰めを迎えています。

なので、エビベジサイトはまだリンクも張っていませんが、
オープンしたらお知らせしますね。

伊勢丹イベントは27日まで開催です。
おいしい野菜を愛する方は、ぜひお立ち寄りください。
取り急ぎ、お知らせまで。
クリエイティブのプロセスなど、詳しくは後日に。

*エビベジサイトは、この後15日にオープンしました。

自宅のリフォームが完了

建築家のキドサキナギサさんと組んで進めてきた自宅リフォーム。
お互いが忙しいことに加えて、震災の影響もあって遅れましたが、
この夏、ようやく1年がかりで完了しました。

キドサキさんは、空間づくりの仕事をご一緒したり、
私の作品展の空間を担当していただいたこともあり、
私らしさを理解していただいているという安心感があります。

 

キッチンやバス、トイレも含めてすべての部屋に窓があり、
広くはないマンションながらも、中庭の樹木の緑を借景にのぞめる我が家。
風と緑を感じて暮らすのにふさわしい、白い箱にしたいと考えました。

ふだんのグラフィックの仕事でも、
風合いのよい白い紙の、光によってうつろう表情が好きなので、
住まいの空間に白を選ぶのは、ごく自然ななりゆきです。

白と言っても幅がありますが、生活空間なので
あまり白すぎない、ベージュ系に少し転んだ色調をベースに
壁、カーペット、タイル床の候補をあげて
組み合わせを検討するところは、ほとんど仕事の感覚。

ちなみに、フローリングでなくカーペットにしたのは、
ラグなどを敷かないで床に座ったりしたいのと、
いずれ一緒に暮らす犬にもやさしい、という気がしたからです。

造り付けの家具は、白ではなく木でまとめ、
リビングとキッチンは深い色のウォールナットで引き締めました。

 

空間の仕事のときは、その施設の本質と向き合って
然るべき姿を探るのですが、今回は自分自身がクライアント。
自分の本質、大切にしているものを見つめ直すような一年でした。

次回は、そのあたりのお話を。

今年も長岡大花火大会へ

昨日は、長岡大花火大会に行ってきました。
13年前に長岡とのいくつかのご縁が始まって以来
地元の方からちょくちょくお誘いいただくようになり、
今ではすっかり夏の恒例行事となりました。

東日本大震災があった今年は、各地で花火大会が自粛されましたが、
もともと鎮魂と復興祈願から発している長岡の場合は、
自粛どころか、むしろ今こそ、という強い意志が感じられます。

 

今回も、ほんの数日前に新潟と福島を襲った記録的豪雨により
信濃川に面する花火会場にも水が上がり、開催が危ぶまれたようでしたが、
市を上げて修復をして8月2日の開催にこぎつけました。

ところが、3日になって長岡と三条に大雨・洪水警報が発令され、
ぱらつく雨に不安になりましたが・・・

 

夕刻には雨雲も消えて、見事に晴れ渡った空!
こうこなくっちゃ。

美しい夕焼けを見ながら、長岡の街を信濃川に向かいます。
大きな河川を持つ街は、互いにどこか似通った雰囲気があり、
長岡には、私の故郷の岐阜市に通じるものを感じます。

黙祷から始まった花火大会。
船の桟敷席では、首が痛いほどの頭上に高々と打ち上がります。
ひとつ一つ、花火のスポンサー名と解説が読み上げられるのもご愛嬌です。

そして、終盤。
今年もフェニックスは、平原綾香の「Jupiter」にのせて
私たちの視界を180度埋め尽くすように、
次々と打ち上げられました。

一昨年は、その年に逝った愛犬ココをおくる
個人的に忘れられない花火となりましたが、
今年は、東日本大震災の被災者の方々への鎮魂と、
日本の復興を祈願するという、これまでにないフェニックス。

 

祈るように、夜空を見つめていました。

今の日本人に、
祭りは、打ち上げ花火は、
やはり必要なのだと思います。

「いろはもみじ」ができるまで

こちらも、パッケージのリニューアルを担当した
藤い屋さんの「いろはもみじ」というお菓子。
昨日、やっとオンラインショップに登場しました。

本店がある宮島のもみじが、葉が小振りな「いろはもみじ」という
種類であることに因み、春の芽吹きをうぐいす豆、
秋の紅葉を大納言小豆で表現したお茶菓子です。

鹿の子を錦玉糖で包んだ感じのお菓子で、
しゃりっとした外側と、中の豆のふっくらとした食感の
贅沢な組み合わせは、お抹茶にもぴったり。

さて、そんな「いろはもみじ」ですが、
自分の中でデザイン案が決まるまで、
実はとても長い時間を要しました。

 

本質にそぐわないと感じたアイデアは容赦なく切り捨てていき、
お菓子の個包装の形と、茶室のイメージからくる正方形をモチーフにし、
春と秋の色を組み合わせた文様にする案に絞り込んだところで
ようやく入り口にたどりついた気がしました。

様々なデザインを試みるうちに、
文様を単なる抽象的な装飾で終わらせることなく
言葉を文様で表したい、と考えるようになり・・・。

キーワードの「いろは」を文字にできないものか、と
試行錯誤を繰り返しましたが、どうも違う。

ふと、「イロハ」という片仮名になることに気付いたときには、
頭上に電球がぱっと灯ったようでした。

商品を人に差し上げるたびに、この謎掛けをします。
すぐに解読する方も、悩んでしまう方も人それぞれですが、
ちょっとしたコミュニケーションを生む仕掛けです。

2個入りから12個入りまで、こんなラインナップで完成。
根気よく待ってくださったクライアントのおかげですが、
あきらめずに粘って答えを出すことができたケースであり、
プロとして、この姿勢を崩さずにいきたいものです。

 

 

 

宝石のようなお菓子「花虎白」デビュー

ブログの間がすっかり空いてしまいましたが、
この春にはいくつかの商品がデビューしました。
そのうちのひとつが、
広島の藤い屋さんの「花虎白(はなこはく)」というお菓子です。

フルーツのピュレを砂糖と寒天で固めた、いわゆる琥珀糖ですが、
箱に詰められて届いたときの印象が宝石箱のようでしたので、
それをパッケージデザインの核としました。

お菓子のとんがった形からシャープな菱形の箱を、
3種類のフルーツの色から、白、紅、黄の3色の
さまざまな組み合わせを考えました。

白は西洋梨、紅色はフランボワーズ、黄色はマンゴで、
外はしゃりっと、中はぷるっとした、食感も楽しいお菓子。

その楽しさを、パッケージの組み合わせでも表してみました。
6つ並べると花のようで、3つだと六角形にもなります。

「花虎白」というネーミングは、
花のような琥珀糖というところからですが、
「琥」という文字の画数の多さが気になり、
琥珀とも「王」へんをとってみては、とご提案。

そうすると文字面もすっきり。
ネーミングを担当した永松聖子さんが、
「琥珀という言葉は一説によると、
中国で虎の固まりが琥珀になったという伝説から由来」
と語るように、もとの意味にも合っているようです。

花はフランボワーズ、虎はマンゴ、白は西洋梨を
表しているとも言えるネーミング。
私のお気に入りの和食店「虎白」とも仲間のような・・・。

6月末頃には、オンラインショップにも登場します。

 

こんな時期ですが、こんな時期だからこそ、
日々の生活にささやかな彩りを添えられるような
デザインをしていきたいと思います。

 

風評被害に負けることなく

震災から長かった一ヶ月が過ぎ、
少しずつ食事の会にも誘われるようになりました。
過剰な自粛による経済破綻という二次災害を防ぐ目的と、
自分たちの明日への活力を蓄えるためですが、
昨夜の集まりにはもうひとつ目的がありました。

放射能の風評被害にさらされている地域の農産物を
農家のみなさんと一緒にテーブルを囲んで美味しくいただき、
みんなで元気になろうということです。

ギリークラブの渡辺幸裕さんにより
「東京元気シリーズ」という名で始まったこの会、
昨日は栃木の海老原ファームのとびきり美味しい野菜を
ホテルニューオータニ東京のSATSUKIで太田高広シェフに
特別メニューとして料理していただくという企画でした。

放射性物質が基準値を下回り、普通に出荷されている安全な野菜が
市場で買いたたかれるきびしい現実にありながら、
農家のみなさんは被災地に野菜を届ける活動も始められています。

 

消費者である私たちにできることは、彼らが丁寧につくる野菜を
これまでと変わらずに購入して美味しくいただくこと。

つくり手の海老原さんを前にして野菜を頬張るとき、
20名近く集まった「エビベジ」ファンの顔は、一様にほころんでいました。

 

日本全体が、海外からの風評被害にあっているという深刻な事態。
日本の中で風評被害の加害者と被害者をやっている場合ではありませんね。

私と、お隣に座っていたコピーライターの永松聖子さんは、
仕事としても農家のみなさんの応援団をしています。
9軒の栃木の農家さんたちが美味しい野菜づくりの技を磨き、
チーム名も決めて市場にデビューしようという矢先に起きた大震災。

難易度が高まった分、
デザイナーとしてもやりがいがあるというものです。

 

 

私たちにできること

大震災から2週間が過ぎ、余震はいくぶん落ち着いたものの、
原発による被害が電力不足から放射能汚染へと広がってきたことで、
東京からも関西へ、あるいは国外へと避難する人が少なくないようです。

今や東京で暮らすことも、まるで危険な土地でのサバイバルであるかのようで、
節電をしたりしながら前向きになっていた気持ちにも、
ときおり不安の影がさし、仕事に集中できないときがありました。

 

そんな中、書のお稽古に行ってきました。

こういうときなので、復興への祈りを込める般若心経にチャレンジ。
お経の意味するところも理解していない私が、とも思いましたが、
筆をとると、波立っていた心が徐々に鎮静されていくのでした。

清々しい達成感で、帰りには新宿伊勢丹に立ち寄り、
切らしていた化粧品と新しい下着を買いました。

 

私たちにできること。

自分の日々の仕事をこれまでのようにこなし、
ふだんのように消費をして生活していくことこそが、
日本の復興につながることなのでしょう。

そして、災害を前にしたときにデザインは無力、などと悲観することなく
デザインにできることを考えていこうと思います。