東日本大震災 被災者のみなさまに

それは、平和に自分の誕生日ディナーを楽しんでいた翌日、
帰省を経て、伊勢神宮参拝の会に参加しようとしていた矢先の出来事でした。

あの瞬間を境に、すべてが想像できないほど変わってしまったという現実は、
揺れの直後につけたテレビからの映像で知ることとなりました。

五日目となった今日も、まだ十分には言葉にならないのですが、
とにかくこの場を借りて、命を落とされた方々のご冥福を祈り、
被災されたすべての方々に、心よりお見舞いを申し上げます。

余震や原発の問題など、まだまだ不安材料は多く、
すぐに状況が改善されるという見通しも立たない状態ではあります。
ただ、そんな中で外国の方々からのあたたかなメッセージや
日本人の国民性を評価して励ます各国の報道内容が、
しずんだ気持ちに光を与えてくれることもありました。

Twitterなどのソーシャルネットワークも、
本来それらが向かうべき良い方向に働いた一面があったようで、
今日は感動的なTwitterをまとめたfacebookのサイト
知らせていただきましたので、ここにご紹介したいと思います。

感動は瞬時に連鎖する───。

それを実感して、胸が熱くなりました。
郵便局まで義援金の寄付に出かけて、
帰ってきたところで送られてきたサイト。
これを少しでも人に伝えたくなりました。

 

なによりも、被災者のみなさまに
これらの言葉が伝わりますようにと、願ってやみません。

 

 

 

ambiente 2011に出展 その2

ennの参加メーカーである玉川堂の製品では、サービングプレートのサイズ別に百枚単位での見積もりオーダーをいただきました。玉川堂は今年、ワイングッズも自主的に出品しています。手前のワイングラスはリーデルとのコラボレーションで、ガラスと鎚起銅器を特殊な技術で接着させたもの。ガラスと金属の組み合わせは、メッセ会場広しと言えどもなかなかありません。
後方のボトルクーラーは玉川堂とKRUGのコラボレーションによるもので、ennの製品ではない参考出品ですが、ボトルを包み込む優美なフォルムに来場者の関心が集中していました。

メッセ会場を廻っていると、自分自身が好きなものとの出合いもあります。この木箱のメーカーもそのひとつ。「ERCOLANO」というイタリアのメーカーで、数年前、美しい配色のジュエリーボックスに一目惚れしました。今年は放射状のデザインの箱を出品しているようです。
自分では多色使いのデザインをあまりしませんが、こういう色と形で直球勝負しているものには理屈抜きで惹かれます。

このアクセサリーブランド「COEUR DE LION」もブース散策で見つけたお気に入り。どこで買えるのかたずね、サイト入りのカードをいただきました。あいにくショップまで出向く時間がありませんでしたが、このネックレスの配色には釘付けでした。

新潟県から毎年出展している地域ブランド「百年物語」ブースでは、新しい農具を発見。農業のブランディングの仕事もしているため、こういう道具に反応してしまいます。農具のユーザーでなくても良質な道具であることが伝わってくる一品でした。

国際市場での貴重なダイレクトマーケティング体験。成果と課題を残しながら、三日間の滞在期間はあっという間に過ぎ、現場をアテンドスタッフにおまかせしてフランクフルトを後にしました。そして、帰国後に待っていたのは都内での新たな販路のオファーです。

ennのブランディングを担当し始めた頃から、どの仕事でも売り場までをよりしっかりと見据えるスタンスになりました。ユーザーと企業が直にコミュニケーションする場ですから、デザイナーにとっても当然といえば当然のことなのでしょうね。

 

ambiente 2011に出展 その1

毎年約15万人が来場する恒例のフランクフルト国際消費材見本市「ambiente」にennで出展してきました。2006年以来なのでかれこれ6回目になります。1号館から11号館まである広い会場で、私たちのブースは10号館の2階。bodumなどをはじめとするキッチン用品やテーブルウェアのブースが集まっています。

ennのプロデューサーである明道章一さんの「キッチンプランニング」のブースの半分以上を使ってenn製品を展示。最前面に配した漆プレートとカトラリーは、通りかかる多くのバイヤーたちが手に取っていきますが、今年は特に初日の午前中に訪問バイヤーが多く、商談スタッフが手一杯のときには、私も接客をしました。

今年は、これまでのテーブルウエアの他に、フォトフレーム、アクセサリー類、既存のプレートを活かした時計の試作も出してみました。テーブルから生活空間全体に少しずつ広げていけたらと思っています。時計は、インドのバイヤーから贈答用に2,000個の見積もりオーダーをいただきました。

ときどき日本から出展している他のブースも訪問したり、訪問されたり。燕三条からは、私がブランドロゴを担当した燕三条ブランドスノーピーク諏訪田製作所ほか出展企業が多く、夜は大勢で街に繰り出します。

メッセ初日は20人以上でドイツ料理店に。ヴァイツェンビールを飲みながら、どんと盛られたソーセージやシュニッツェル(カツレツ)、じゃがいもなどをいただきます。フランクフルトには、タイ料理やベトナミーズの美味しいお店もありますが、初日はやっぱりドイツ料理でしょう。

6時前に起きて8時半から準備をし、一日会場で市場調査をして、6時過ぎたら片付けてみんなで夕ご飯。日本での日常生活ではあり得ない、人間らしい一日でした。

金沢・富山の美味しい旅

年明けからの大忙しですっかり更新の間が空いてしまいましたが、先月、裏地桂子さんのお誘いで冬の金沢・富山に美味しい旅をしました。ご一緒したのは「幻燈士なかだ」の中田昇さんと「金沢倶楽部」の丹羽麻理さん。お二人とは初対面ながら、力のある料理人と地元の情報通という心強い道連れです。
「小松弥助」のお寿司に富山の寒ブリ、満寿泉の醸造元「舛田酒造」訪問が目的の美食旅行。まずは、二十一世紀美術館経由で「小松弥助」にランチにうかがいました。

日本全国からやってくるお客さんでなかなか予約がとれない理由は、もちろんとても美味しいからですが、その美味しさは「ひと」からくるところが大きいようです。握るのが楽しくて仕方ないといった感じの、今年80歳になるご主人のこの笑顔。当たり前のことですが、やっぱり料理はなにより素材と「ひと」の調和ですね。私もこんな風に、お客さんに活きの良いデザインをぽんっと出しながら年を重ねたいなぁ。

大満足のランチの後は各駅停車で富山へ。「舛田酒造」のある岩瀬の街は、舛田隆一郎さんによって風情のある街づくりがなされていました。陶磁器、ガラス、木彫などの若手工芸作家さんたちの工房も訪ね、最後に「舛田酒造」の雰囲気のよいセラーや工場を見学。これから銘酒へと育っていくお米も美しいです。

一日の出来事と思えないほど盛りだくさんな日の終盤のお楽しみは、「海老亭別館」での寒ブリと日本酒の晩餐です。舛田さんが選んでくださった満寿泉をはじめとするお酒を、料理ごとに合わせていただきました。地元の旬の食材に地元の銘酒で、絶妙なマリアージュを満喫。

その後、金沢にもどって「広坂ハイボール」というバーへ。よく飲み、よくいただいた至福の一日は、まだまだ終わりませんでした。

旅のお土産は、金沢の「甘納豆かわむら」のレモン菓子などを買い込みました。以前、裏地桂子さんにいただいて、あまりの美味しさに一気に一袋食べてしまった逸品です。手作り感たっぷりの素朴なパッケージが可愛い。こういう愛嬌のあるデザインには私が入る余地はなさそうですね。

犀川沿いにあるガラス作家、辻和美さんのショップ「factoryzoomer/shop」にも案内していただき、黒と磨りガラスが印象的な小皿を2点購入。つくりたいものが非常に明解な作家さんのようで、それが作品の魅力にもなっています。

美味しいものだけでなく人やモノとのよい出会いにも恵まれた今回の旅。裏地桂子さん、中田昇さん、丹羽麻理さん、舛田隆一郎さんたちに感謝です。旅から帰った翌日がいきなり徹夜でしたが、その後を乗り切っていく大きなエネルギーにもなりました。

間もなく、毎年恒例のフランクフルト見本市出展。ennの新製品も発表しに行ってきます。次の旅も、実り多いものになりますように。

島田雅彦氏の『佳人の奇遇』を装丁

年末に装丁した本の見本が届きました。島田雅彦氏の『佳人の奇遇』という、講談社文庫の一月の新刊です。担当編集者は斎藤梓さん。裏地桂子さんのお友達で、彼女のブログから私のサイトをご覧になり、紹介されたといういきさつです。
判型はもちろん、紙も基本フォーマットも決まっており、印刷も普通の4色プロセスのみという文庫本の装丁は、実は初めてでした。単行本では、本としての物質的な魅力を出すための工夫をあれこれしてきましたが、今回はそういう手管は使えません。丸腰での勝負と言いますか、グラフィックの原点に立ち返る覚悟の必要性を感じました。
実は島田さんの小説を読むのも初めてでしたが、さっそく原稿を読んだところ、これがお世辞抜きで本当におもしろいのです。上質なエンターテインメントで、読みやすさと知性のさじかげんがいい塩梅。小説の核となるモーツァルトの歌劇『ドン・ジョヴァンニ』のCDをさっそく購入し、YOU TUBEでの映像も見て、この本の世界へとぐんぐん入っていきました。

何日か過ぎ、繰り返し聞くモーツァルトが脳に良い効果を与えてくれたのか、装丁のアイデアが湧いてきました。この本は、『ドン・ジョヴァンニ』の楽曲を指揮するタクトの動きに乗って展開されるような、さまざまな恋愛群像劇。それを象徴的に表現するために、タクトの軌跡をモチーフに選びました。しばりがある文庫本であることをプラスに捉えた、シンプルな着地点です。

帯はこんな感じです。島田氏の本を読んだことのない人にも手に取っていただけたら、という気持ちをこめてデザイン。1月14日頃に発売のようですので、興味のある方は店頭でご覧になってくださいね。

映画『レオニー』からの贈り物

映画『レオニー』を鑑賞して、その直後に松井久子監督を囲む懇親会。そんなギリークラブの企画に昨年末に参加しました。主人公レオニーがあのイサム・ノグチの母というところに関心があった私は、前から観たいと思っていたのです。
観る人によって受け取るメッセージが分かれそうに思いますが、私には理屈抜きで深く心に残る作品でした。激動の時代を強く生きた一人の女性の生き方として勇気をもらえるだけでなく、大きな愛情でイサムを天才芸術家に育てあげていく過程も、クリエイターとしてはとても興味深いところでした。

日本の風景をとらえるカメラワークの美しさと、繊細で叙情的な音楽との調和も、この映画の大きな魅力。私が、日米合作というよりヨーロッパ映画のような印象を受けたのは、この映像と音楽によるところが大きいと思います。
さっそくサウンドトラック盤を購入し、年末の日々に繰り返し聞きました。

DVDではなく劇場で観ることをお勧めしたい作品です。松井監督は、30代前半くらいの若い女性にもっと見ていただきたいと言っておられましたが、私自身が最もよく映画を観ていたのは20歳前後。あの頃の自分に見せてやりたかったな、と思いました。

1月で終わる劇場もありますので、ぜひお早めに。

新しい年の初めに

あけましておめでとうございます。
新しい年の始まりは、自分がデザインしたennの漆プレートに盛りつけたお節にシャンパン。この後、お煮しめやなますに日本酒を合わせ、しめはやっぱりお雑煮です。おもちは、年末に海老原ファームからいただいてきたつきたてを、自分で力いっぱい切り分けました。器は輪島の桐本さんの真新しいすぎ椀。見た目にも美味しいお椀になりました。

午後は地元の用賀神社に初詣に向かい、帰りは自宅から徒歩2分のオフィスに立ち寄って、年賀状の束をピックアップ。デザイナー仲間からのは、形状も様々、印刷加工にも凝ったものが多く、干支であるうさぎのふわふわな質感を表現する起毛加工のものも複数ありました。

今年は、建築家のキドサキナギサさんと一緒に昨年から進めている自宅マンションのリフォームを通して、空間と家具デザインの基盤をつくる、という目標がまずひとつ。これは公私にわたる目標と言えます。そして、環境を整えた上で、2月に三回忌がやってくる愛犬ココの二代目を迎えたいという願いを今年こそ・・・。

仕事では、いま進めているいくつかのプロジェクトと、この先発生するであろう案件に対して、守りに入ることなく革新の姿勢で取り組みたいと思います。でも、こういう新年の抱負を三日坊主にせずに意識し続けることこそが、なにより大切ですね。

2010年の終わりに

オフィスと自宅の大掃除に、年賀状書きもなんとか済ませて大晦日の夜を迎えました。今年もどこにも行かないで東京での年越しです。
2010年を振り返ると、達成できたこととして、まずこのサイトが完成したということがあります。今年こそ、と掲げた3つの目標のひとつでした。残りの2つはと言うと、来年の春には達成できそうに思います。

仕事では、主にレギュラーのクライアントの商品開発やリニューアルが相次いだ一年でした。新しいダイナミックな動きが実現に至らなかったりした代わりに、ストレスも少ない年でした。各クライアントにとっては、新たな基盤作りの年であったかと思います。来年は、まず現状の課題を完成させることからですが、ゼロからスタートするプロジェクトもやってみたいものです。

人間関係においては、様々な新しいご縁に恵まれましたが、特に社会的にも話題になった「女子会」が、私の周りにもいくつか生まれました。学生時代からなにかと紅一点が多かったので、これは新鮮です。世代に関わらず起きている潮流なのでしょうか。

私生活では、どんなに忙しくても毎週日曜日のスポーツクラブ通いを心がけ、玄米に野菜中心の食生活で体調も整えた一年です。そのおかげかどうか、ゴルフも3回の優勝を果たしました。来年は、もっと高めの目標を掲げています。

と、書いているうちに2010年が終わりつつあり、カウントダウンが始まります。来年も、佳い年となりますように!

審査会から審査会へ、の師走

今年のJAGDA年鑑の二日間にわたる審査会が終わりました。先週の一日で担当カテゴリーの入選作品を選び、今週は新人賞とJAGDA賞の選出です。近年の不況にも関わらず年鑑の応募点数が増えている一因に、新人賞を目指す若手の活発な応募があり、その中から選りすぐられた候補者たちを3名に絞り込むのは容易なことではありません。リリースされるまではここで具体的な結果を書くわけにいきませんが、ハラハラするような逆転劇を経て今年の3名が決まりました。
私自身も13年前に念願だったこの賞をいただきましたが、ここがいつも自分の原点という気がします。現状に安住せずに、あの頃のハングリーな向上心を思い出さなくてはいけませんね。折しも2011年を迎えるわけですし。

翌日は、大阪でのエコプロダクツデザインコンペ審査会へと向かいました。気持ちのよい蒼天に映える師走の富士山。電線が新幹線からのショットであることを物語っています。

京都に近づく頃、車窓には大きな虹が。虹を見ると応援されているような気がするのは私だけではないでしょう。

品川駅エキュートの「てとて」で買っておいた鯛飯のお弁当を、新大阪に着く前にいただきました。鮭の切り身が厚いところがお気に入り。

前日のグラフィックの審査から頭を切り替えて、今度は一般公募のエコプロダクツです。これが果たしてエコなのか、というものも多く、今後の課題が多いコンペでした。でも、これで今年の審査のお仕事はすべて終了。来年は審査される側としてもがんばろうと思います。

売り上げナンバーワンの辞典

2月から装幀の仕事を進めてきたベネッセの「小学国語辞典」と「小学漢字辞典」が、やっと完成し、オフィスに届きました。かれこれ10年ほど前からベネッセの辞典の装幀を担当していますが、幸いここ3年ほど、小学国語辞典において売り上げナンバーワンのようです。(厳密には国語が3年、漢字が2年)辞書引き学習を勧める広告の効果や、辞典としての使いやすさによるものらしいですが、装幀が子どもたちやお母さん方に評価いただいているという、嬉しいお言葉も。
そのため、今年の改訂では、デザインのリニューアルによる、さらなる「パワーアップ」を期待されました。私はいわゆる「パワー」とか「パンチ」のあるデザインが得意な方ではありませんが、ユーザーとのコミュニケーションのための、強さではない魅力をいつも目指しています。そこで、3年前の登場以来ユーザーに支持されているクマのキャラクターに続投させながら、コンセプトをより象徴的に打ち出すことに決めました。そのコンセプトとは「言葉を学ぶことで広がるコミュニケーション」です。
いくつかの案を形にしていく中で、クマたちが大きな輪でつながり、国語と漢字の辞典どうしもつながっていくという案に至りました。

書店に並んだときに、クマたちが隣の辞典のクマたちとつながります。左右逆に置かれたときは、足でタッチ。クライアントから「ならば、積んだときにも側面がつながったらどうでしょう」というご意見も出て、そこにもクマをプラスしてみました。やり過ぎは禁物ですが、この足し算はなかなかです。

こんな感じで永遠につながります。本の背表紙には、つながる足跡を入れました。

こちらは表紙のテスト版ですが、イラストをエンボスで表現しました。背表紙にも足跡を追加。立体的なエンボスと足跡はしっくりくる組み合わせです。

育ち盛りの子どもが日々使うもののデザインをすることは、実は責任重大。売ることを優先した、店頭で目立つ、強さだけのデザインへの抵抗はここにあります。その結果として子どもたちの評価が得られれば、こんなに嬉しいことはありませんね。