売り上げナンバーワンの辞典

2月から装幀の仕事を進めてきたベネッセの「小学国語辞典」と「小学漢字辞典」が、やっと完成し、オフィスに届きました。かれこれ10年ほど前からベネッセの辞典の装幀を担当していますが、幸いここ3年ほど、小学国語辞典において売り上げナンバーワンのようです。(厳密には国語が3年、漢字が2年)辞書引き学習を勧める広告の効果や、辞典としての使いやすさによるものらしいですが、装幀が子どもたちやお母さん方に評価いただいているという、嬉しいお言葉も。
そのため、今年の改訂では、デザインのリニューアルによる、さらなる「パワーアップ」を期待されました。私はいわゆる「パワー」とか「パンチ」のあるデザインが得意な方ではありませんが、ユーザーとのコミュニケーションのための、強さではない魅力をいつも目指しています。そこで、3年前の登場以来ユーザーに支持されているクマのキャラクターに続投させながら、コンセプトをより象徴的に打ち出すことに決めました。そのコンセプトとは「言葉を学ぶことで広がるコミュニケーション」です。
いくつかの案を形にしていく中で、クマたちが大きな輪でつながり、国語と漢字の辞典どうしもつながっていくという案に至りました。

書店に並んだときに、クマたちが隣の辞典のクマたちとつながります。左右逆に置かれたときは、足でタッチ。クライアントから「ならば、積んだときにも側面がつながったらどうでしょう」というご意見も出て、そこにもクマをプラスしてみました。やり過ぎは禁物ですが、この足し算はなかなかです。

こんな感じで永遠につながります。本の背表紙には、つながる足跡を入れました。

こちらは表紙のテスト版ですが、イラストをエンボスで表現しました。背表紙にも足跡を追加。立体的なエンボスと足跡はしっくりくる組み合わせです。

育ち盛りの子どもが日々使うもののデザインをすることは、実は責任重大。売ることを優先した、店頭で目立つ、強さだけのデザインへの抵抗はここにあります。その結果として子どもたちの評価が得られれば、こんなに嬉しいことはありませんね。